特許、実用新案、商標、意匠から訴訟、調査、コンサルテーションまで

トピックス

アーカイブ | RSS |
商標 : 新しいタイプの商標をきっかけに思ったこと
投稿者 : admin 投稿日時: 2015-06-10 21:40:59 (790 ヒット)

 本年4月1日より、新しいタイプの商標の出願受け付けが開始されました。新しいタイプの商標とは、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標という、全部で5つのタイプの商標です。商標権で保護され得る商標のタイプは、従前より、文字商標及び図形商標、サービスマーク、立体商標というように徐々に拡充されてまいりましたが、今回、一気に5つのタイプが追加されたことになります。

 このように、商標権で保護され得る商標のタイプは少しずつ広がっているわけですが、なぜそうした事象が生じているのでしょうか。それは私たちを取り巻くビジネス環境の変化が大きく関係していると思います。
 振り返ってみれば、かつての私たちは貧しく、モノが不足する世の中に生きていましたので、企業はモノを十分に行き渡らせて人々が豊かに暮らせるようになることを目指し、商品の開発・製造に力点を置いていました。このような時代において企業に求められるのはモノづくりの力、及び販売チャネルを通じて消費者に商品を届ける供給力であり、商標が持つ基本的な能力である自他商品識別力は、この時代においてはさほど重要ではなかったように思います。

 こうした企業努力によりモノが行き渡り始めると、市場競争が激しくなっていくとともに、消費者の関心は次第に商品の高度な機能や品質に移って行きました。そこで、企業は同業他社との差別化を図るべく、高機能・高品質な商品の特徴を消費者にアピールするようになり、広告宣伝活動が活発化していきます。そうした広告宣伝活動での訴求力に貢献したのが商標です。商標により自社商品を消費者に印象付けて、購買意欲を高められる可能性があることから、企業は印象的な文字商標及び図形商標の出願を積極的に進めていくことになります。

 ビジネスはさらに変化を続け、やがてモノからコトへ、第3次産業、すなわちサービス業が発展しました。自社のサービスを商標権で保護された商標の下で安定的に提供したい、というニーズから、サービスマークが商標権の保護対象に追加されます。
 そして、インターネットの登場やその後のブロードバンド化・ソーシャル化により、モノづくりも販売チャネルもサービス業も、さらには原材料、輸送、決済システム、ビッグデータといったあらゆる部分において、サプライチェーンが丸ごと変革されるような劇的な変化が次々と起きました。人々の価値観はますます多様化することとなり、商品・サービスの特徴も、広告宣伝活動も、消費者のニーズも多様化しました。企業は自社商品・サービスの価値の源泉を見つめ直し、多様化する顧客のうちのどの層をターゲットとしたビジネス展開を行うべきかのポジショニングを行い、そうして選択した事業領域に有限な自社資源を集中的に投入していくというような、高度な経営戦略を遂行していくこととなります。自社商品・サービスの価値の源泉を見つめ直していく中で、企業のブランド力が注目され、このブランド力を支える商標の定義付けが見直された結果として商標権の保護対象に導入されたのが、少し前の立体商標であり、今回の5つの新しいタイプの商標といえるかと思います。

 今回、弊所は複数のお客様からのご依頼を受けて新しいタイプの商標の出願手続きをいくつか経験させて頂きました。これらの出願が、お客様の貴重な資源投入の一つの現れと考えるならば改めて背筋が伸びる思いであるとともに、お客様の高度な経営戦略遂行に微力ながらも貢献できる機会を得たことに大きな喜びを感じています。


印刷用ページ このニュースを友達に送る

このページのトップへ