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投稿者 : admin 投稿日時: 2015-04-03 08:30:55 (4121 ヒット)

今年(平成27年)4月1日から特許異議申立制度の運用が開始されました。

4月1日以降に特許掲載公報が発行される特許を対象に、特許異議申立てが可能です。

特許権者の立場、特許異議申立人の立場で、それぞれ留意点を示します。

特許権者の立場

早ければ4月中旬に事件番号が通知され、その後、特許異議申立書の副本が送付されます。しかし、その時点で特許異議申立書に記載された内容に関する反論はできません。審判官から通知される取消理由に対しては、意見書の提出等が可能です。

特許権者は、早期の特許異議申立ての審理開始を希望する旨の意思表明である、「特許異議申立期間経過前審理の上申書[1]」を提出することができます。しかし、以下の理由によりこの上申書の提出はお勧めできません

(1)審理が開始されても特許異議申立て期間は短縮されません。そのため、審理開始後に別の特許異議申立てがなされることにより取消理由が再度通知され、その都度対応が必要になる可能性があります。

(2)訂正の請求には手数料が必要なため、対応の機会が多いほどコストが嵩んでしまいます。

代理人による手続きを行う場合には、拒絶理由通知への対応とは異なり、「代理人受任届」の提出および代理権の証明が必要です[2]。従前に提出した包括委任状に所定の文言[3]が含まれていれば、その包括委任状を援用して代理権を証明できますが、所定の文言が含まれていない場合には再度の包括委任状の提出、または個別委任状の提出が必要となります。

特許法の条文からは明らかではありませんが、特許庁は特許異議申立ての審理において、無効審判に倣って「決定の予告」(無効審判の「審決の予告」に相当)を行うことを明らかにしています[4]。「決定の予告」は、再度の取消理由の通知として受け取ることになります。すなわち、特許権者には原則として複数回の応答の機会が与えられます。このことを見越した戦略的な対応が必要です。

特許異議申立人の立場

特許異議申立書には、特許番号、特許異議の申立てをする請求項、申立ての理由、および証拠などを記載します。審判官は、特許異議申立書の記載に基づき審理を行うので、たとえば従属請求項に対する申立ての理由が適切に記載されていない場合は、被従属請求項に取消決定がされても従属請求項には維持決定がされてしまう可能性があります。したがって、障害特許が従属請求項にもおよぶ場合を考慮し、申立てを行う全ての請求項に対する証拠を収集し、これに基づき十分な申立ての理由を記載すべきです。

特許掲載公報の発行から6カ月以内に、特許異議申立書および添付書類(公開公報などの証拠)を特許庁に提出します。添付書類は、日本国特許庁が発行した公報であっても省略することができません。添付書類が外国語の場合は翻訳文も必要ですが、翻訳文は当該期間の経過後でも提出可能です。[2]

特許異議の申立期間は6カ月あるので申立書の作成に十分な時間をかけることができます。一方、特許権者による訂正請求後に特許異議申立人が意見書を提出できる期間は30日しかありません[5]。取消理由が通知されると、この意見書を提出できる期間もある程度予想できるので、その期間内での検討体制を整えておくことが重要です。

[1]特許庁 「特許異議の申立てに係る様式作成見本について」に含まれる「特許異議申立期間経過前審理の上申書の記載例(PDF:43KB)

[2]特許庁 「特許異議の申立てQ&A

[3]特許庁 「特許異議の申立てに係る様式作成見本について」に含まれる「包括委任状及び個別委任状の記載例(PDF:69KB)

[4]特許庁 「特許異議申立制度の実務の手引きの公表について」に含まれる「特許異議申立制度の実務の手引き(PDF:1,800KB)」のP.50 「9.取消理由通知(決定の予告)」

[5]特許庁 「特許異議申立制度の実務の手引きの公表について」に含まれる「特許異議申立制度の実務の手引き(PDF:1,800KB)」のP.49 「8.特許異議申立人による意見書の提出」


投稿者 : admin 投稿日時: 2014-07-31 17:06:55 (8508 ヒット)

 本年3月下旬、特許庁の新着情報に「前置報告を利用した審尋についてを更新しました」という施策情報[1]が、ひっそりとアナウンスされました。これによると、拒絶査定不服審判の前置審査解除後に審判部が原則全件に対して前置審尋を行うという、平成20年10月から続けられてきた運用が本年4月以降は改められ、全件審尋運用の対象が医療、バイオテクノロジー関係の技術分野のみに縮小されることとなりました。
 これまでの前置審尋では、前置審査の報告書の内容が提示され、ここに示された理由に対応する審判請求人の反論や、補正案、面接要請等を審尋回答書に記載して指定期間内に提出していました。今後は、審査前置解除通知が届いた時点で、特許電子図書館(IPDL)の審査書類情報照会や閲覧請求を利用して前置報告書の内容を確認し[2]、その内容に対する反論や補正案等の意見を提出したい場合は上申書により早めに意見を提出することが必要とされています[1][2]。また、面接の希望がある場合には、早めに審判官または審判書記官に電話等で面接の要請を行うこととされています[1][2]。

 弊所では、従来の前置審尋回答書を有効に活用して特許審決に至った事例をいくつも経験しておりますので、今後も前置報告書の内容に対して上申書により意見を提出することは有用と考え、クライアントの皆様には各事件毎に上申書提出が可能であることをご案内し、ご相談に応じて上申書案を作成しております。審査前置解除で拒絶審決に傾きつつある流れを戻すべく、今後もこのような対応を提案させて頂くつもりです。

 ところで、審判部はなぜこのタイミングで全件審尋運用を縮小したのでしょうか?これは単なる憶測に過ぎませんが、本年4月に成立し、5月に公布された改正特許法[3]の改正項目に含まれている特許異議申立制度に備えてのことではないかと思います。「平成26年度特許法等改正説明会テキスト」[4]によると、前身となる旧特許異議申立制度が10年ほど前に廃止されるまでは年間3,000件以上の申立があったとのことです。もし今回の新制度の下でもこれだけの申立件数に達するとなれば、これを審理する審判部に全件審尋に割く余力は見込めないのではないでしょうか?この憶測が当たっているならば、とても有用だった全件審尋運用を縮小しても仕方が無いことなのかもしれません。

[1] 特許庁「前置報告を利用した審尋について」, 2013.3.28(初版), 2014.5.28(改訂)
[2] 特許庁「前置審尋の運用の見直しに関するQ&A」, 2014.5.28
[3] 特許庁「特許法等の一部を改正する法律(平成26年5月14日法律第36号)」, 2014.5.14
[4] 特許庁「平成26年度特許法等改正説明会テキスト」, 2014.5.28


投稿者 : admin 投稿日時: 2014-04-10 22:39:11 (1401 ヒット)

 今年(平成26年)4月から、産業競争力強化法に基づく審査請求料・特許料等の軽減措置が受けられるようになりました[1]。この軽減措置を受けることで、中小ベンチャー企業(設立後10年未満で資本金3億円以下の法人)や小規模企業(原則、従業員20人以下)等の特許出願について、審査請求料・特許料が1/3に軽減されます。また、国内出願だけでなく、今まで軽減措置がなかった国際出願の調査手数料・送付手数料・予備審査手数料も1/3に軽減されることになりました。なお、この軽減措置は、平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求又は国際出願を行う場合が対象になっています。

 今回の軽減措置の対象者は中小ベンチャー企業や小規模企業等となっていますが、これらの対象者に該当しなくても、研究開発型中小企業や、大学・TLO、独立行政法人等の特許出願については、従来からの減免制度を利用することで、審査請求料や特許料を半額に軽減することが引き続き可能です [2]。

 また、今回の軽減措置の対象者も含め審査請求料・特許料等の減免対象者に該当する場合には、早期審査を申請できる可能性があります。中小企業、大学・TLO、公的研究機関等の出願は、早期審査の対象となっているからです[3]。早期審査制度の利用により早期に権利化して、特許権を利用した技術移転や資金確保を目指すことも一つの戦略といえます。したがって、審査請求料・特許料等の減免制度の利用を検討される場合には、あわせて早期審査制度の利用についても検討されるとよいと思います。


※参考資料
[1] 中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置について
[2] 特許料等の減免制度
[3]特許出願の早期審査・早期審理について


投稿者 : admin 投稿日時: 2013-08-14 00:13:52 (13373 ヒット)

 「発明の単一性の要件」、「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」(いわゆる「シフト補正」)の審査基準が改訂されました[1]。

1 「発明の単一性の要件」、「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準改訂のポイントは以下のとおりです。
1.1「発明の単一性の要件」の審査基準について
 以下の(1)及び(2)の手順により、特許法第37条の要件以外の要件を審査する対象が決定されます。
 (1)特別な技術的特徴(STF)に基づく審査対象の決定
 (2)審査の効率性に基づく審査対象の決定

 (1)では、最初に発見されたSTFと同一の又は対応するSTFを有する発明が審査対象とされ、STF以外の構成が一致していなくても審査対象に含まれることになりました。
 (2)では、特許請求の範囲の最初に記載された発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明が原則審査対象とされることになりました。

1.2「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準について
 補正後の特許請求の範囲が補正前の特許請求の範囲に続けて記載されていたと仮定したときに、改訂後の「発明の単一性の要件」の審査基準によって審査対象となる補正後の発明については、特許法第17条の2第4項の要件が問われません。
 つまり、以下の(1),(2)の補正を行うことができます。
 (1)最初に発見されたSTFと同一の又は対応するSTFを有する発明への補正(以下、STFベースの補正)
 (2)補正前の請求項1(STF無)の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明への補正(以下、請求項1(STF無)ベースの補正)

2 今回の審査基準の改訂により、厳しかったシフト補正の審査は大きく緩和されましたが、次の点には注意が必要です。
2.1 今後増えることが予想される請求項1(STF無)ベースの補正を行う際、補正前の請求項1の発明が解決しようとする課題と、当該発明に対して追加された技術的特徴から把握される、発明が解決しようとする具体的な課題との関連性(以下、単に課題の関連性)が低いと判断されないことが必要です。また、補正前の請求項1の発明の技術的特徴と、当該発明に対して追加された技術的特徴との技術的関連性(以下、単に技術的関連性)が低いと判断されないことが必要です。

2.2 請求項1(STF無)ベースの補正を行う際に発明特定事項の一部を削除した場合には、原則、シフト補正に該当するため、注意が必要です。

2.3 第17条の2第4項の要件を満たす補正をしたとしても、補正後の請求項に係る発明同士が第37条違反となる場合がありえるので注意が必要です。

 このように、審査基準の改訂後も依然として補正には十分な注意が必要です。
 特に判断の難しい課題の関連性、技術的関連性については、特許庁審査基準室も「各技術分野ごとに事例を蓄積し、出願人・代理人と審査官とで相場観を作ることが必要」とコメントしています[2]。

 なお、改訂審査基準は、平成25年7月1日以降の審査に適用されます。平成25年7月1日より前の拒絶理由通知においてシフト補正に関する言及がなされた案件についても、平成25年7月1日以降に応答した場合には、改訂審査基準が適用されます。

 弊所では、今後も発明の単一性・シフト補正に関する実務上の事例を収集・研究し、お客様へ適切なアドバイスをタイムリーに提供していきます。
 
※参考資料
[1]特許庁、「発明の単一性の要件」、「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準の改訂について
[2]AIPPI・JAPANセミナー資料、「発明の単一性の要件」、「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準の改訂について、2013年7月29日


投稿者 : admin 投稿日時: 2013-07-18 16:55:35 (2597 ヒット)

 特許庁は、審査請求から一次審査までの期間(FA期間)を11か月にするという目標[1]を掲げて、約10年間、審査の迅速化を進めてきました。昨年(2012年)末でFA期間は17か月まで短縮されており、今年度(2013年度)中には目標を達成できる見込みとのことです[2]。

 しかしながら、来年(2014年)以降の任期付審査官の任期満了にともなって、審査官数が大幅に減少することが予想されます。昨年の経済産業省の政策評価懇談会[3]では、国家公務員の定員や人件費などに厳しい枠がある中で、任期付審査官を引き続き雇用することを認めてもらえるのかどうかという問題が挙げられています。

 知的財産戦略本部が今年6月に発表した知的財産政策ビジョン[4]では、我が国企業の海外での円滑な特許権取得を支援するために審査基盤の整備を進めなければならないにもかかわらず、審査官の人員の手当てなどを行わない場合、FA期間が再び長期化してしまい、2020年には40か月となってしまう(FA40)、という心配な試算値が開示されています。知的財産戦略本部の専門調査会[5]では、FA期間のリバウンドを防ぐために審査官数維持への強いメッセージを出すべき、という意見が出ていました。そのような意見をふまえて、知的財産政策ビジョンにおいて審査官数維持をアピールしていると思われます。

 また、知的財産戦略本部が今年6月に発表した知的財産推進計画2013[6]では、FA11達成後の審査迅速化への取り組みとして、特許の最終的な権利化までの期間を2015年度中に36か月以内にするという目標も掲げられています。しかし、任期付審査官の任期満了の後、FA期間はどうなるのかという問題については、具体的な施策が提案されていない状況です。今後のさらなる施策に期待したいところです。

※参考資料
[1]知的財産推進計画2004
[2]特許ニュース、平成25年4月18日(木)、経済産業調査会
[3]経済産業省政策評価懇談会(第17回)議事録
[4]知的財産政策ビジョン
[5]知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会、第4回配布資料、参考資料1「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の論点」
[6]知的財産推進計画2013


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